学校で配布している「放射線副読本」ってどうなの?
小学生の子供が持って帰ってきた 「小学生のための放射線副読本」 。興味本位で読んでみて違和感があったので 、このブログでご紹介します。
まずは10ページ目のこの部分。放射線の発がん性について書かれているところです。
ちなみに、アメリカのNIH(アメリカ国立衛生研究所)では、、、
Radiation of certain wavelengths, called ionizing radiation, has enough energy to damage DNA and cause cancer(1).
電離放射線と呼ばれる特定波長の放射線は、DNAを損傷してがんを引き起こすのに十分なエネルギーを有します。
Exposure to radioactive iodine (I-131) may increase the risk of thyroid cancer many years later, especially for children and adolescents(2).
放射性ヨウ素(I-131)への被爆は、特に子供や青年の頃だと、何年もの後に甲状腺がんを発症するリスクが高まると考えられています。
Hundreds of thousands of people who worked as part of the cleanup crews (of the April 1986 nuclear power plant disaster at Chernobyl) in the years after the accident were exposed to lower external doses of ionizing radiation, ranging from approximately 0.14 Gy in 1986 to 0.04 Gy in 1989. In this group of people, there was an increased risk of leukemia(2).
事故後数年間にクリーンアップクルー(1986年4月のチェルノブイリ原発事故)の一員として働いた数十万人の人々は、事故後数年間、およそ0.14 Gy(1986年当時)から0.04 Gy(1989年当時)の範囲の比較的低いレベルの電離放射線の外部被曝を受けていた。このグループの人々では、白血病のリスクが高まりました。
日本の副読本では「100 ~ 200 ミリシーベルトの放射線を受けたときのがん(固形がん)のリスクは1.08倍であり、」と書かれていて、固形がんにしか言及していません。
一方、アメリカのNIHでは「放射線によって甲状腺がん、白血病のリスクが高まる」といった旨の内容が書かれています。
固形がんは胃がん、大腸がんなどが含まれますが、甲状腺がんや白血病(血液がん)は含まれません。なぜ、日本は「固形がん」に絞って書いているのか疑問です。
尚、英国政府のホームページにも書かれていますので、興味ある方はこちらもどうぞ。
同じく10ページ目のこの部分。
ちなみに、アメリカのNIHにあるMedlinePlus(3)には、、、
The amount of damage that exposure to radiation can cause depends on several factors, including
・The type of radiation
・The dose (amount) of radiation
・How you were exposed, such as through skin contact, swallowing or breathing it in, or having rays pass through your body
・Where the radiation concentrates in the body and how long it stays there
・How sensitive your body is to radiation. A fetus is most vulnerable to the effects of radiation. Infants, children, the elderly, pregnant women, and people with compromised immune systems are more vulnerable to health effects than healthy adults.
放射線被爆によるダメージの度合いは、下記のいくつかの因子に依存して引き起こされる。
・放射線のタイプ
・放射線の量
・どのように被爆したか?(皮膚から、飲み込んでしまったか、吸い込んでしまったか、あるいは体を通り抜けているか)
・被爆者の体がどのくらい放射線に対して感受性があるか。胎児は放射線の影響を最も受けやすい。幼児、子供、高齢者、妊娠中の女性、免疫システムが損なわれた人々は、健康な成人よりも影響を受けやすいです。
日本の副読本では、わざわざ「放射線が人の健康に及ぼす影響は、放射線の有無ではなく、」と書き、「その量が関係していることが分かっています」というふうに、量にしか言及していません。
しかし、健康に及ぼす影響は「どのくらいの半減期の放射線だったか」、「内部被曝か外部被爆か」、「どんな人が被爆してしまったか」も重要な因子です。だから、「放射線のタイプ」、「どのように被爆したか?」、「被爆者の体がどのくらい放射線に対して感受性があるか」といったことにも、健康への影響は左右されるのです。なぜ、日本は「量」に絞って書いているのか疑問です。
12ページから13ページにかけての下記の部分。
特に注目なのは、この部分。
「下の図では、事故後、時間が経つにつれ、空気中の放射線の量が下がっていく様子が分かります。」
「福島県内の放射線の量は事故後7年で大幅に低下しており、今では福島第一原子力発電所のすぐ近く以外は国内や海外の主要都市とほぼ同じぐらいになっています。」
これを読んだとき、空気中の放射線の量が下がった要因を読み取れる方はどのくらいいらっしゃいますでしょうか?
みなさん、作業員の方々が除染作業をしてくれたから下がったんです。
しかも、ここで書いたのは「空気中の」放射線量。土の放射線量は書いてないのです。そりゃそうです。「汚染土」を集めている所があるわけですから。
なぜ、日本は「除染」のことを書いていないのか疑問です。「ご飯論法」を想起させる記述と考えることもできると思います。
この副読本の執筆に関わった方々から説明を求めて良いと考えられます。
最後に、、、
子どもに「火」や「包丁」の使い方を教えるとき、どんな風に教えていますか?「火は何度あるか?」、「包丁の薄さはどれくらいか?」などから教えますか?
ますは、「危ないもの」と教えると思います。
放射線や放射性物質も、ますは「危ないもの」という事を教えるべきではないでしょうか?その上で、レントゲン検査やPETなどに医療の現場で使われているとか、医学研究などの実験に使われているとか、「正しく使えば有用」であることを伝えるべきではないでしょうか?
この副読本については他にもおかしな記述はございますが、今回は時間の都合上、ここで終わりにします。
最後まで読んでくださって、ありがとうございました。
※放射線の副読本は下記のサイトにあります
http://www.mext.go.jp/b_menu/shuppan/sonota/attach/1409776.htm
(参照サイト)
1. https://www.cancer.gov/about-cancer/causes-prevention/risk/radiation
2. https://www.cancer.gov/about-cancer/causes-prevention/risk/radiation/nuclear-accidents-fact-sheet
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